企画展『ARIGATO SAKURAGAOKA』

カルチャー発信地「渋谷」の再開発に伴い、今年度末に取壊されるビル一棟に50名以上のアーティスト作品を展示する『ARIGATO SAKURAGAOKA』という企画展を訪ねた。主催ARIGATO SAKURAGAOKA 実行委員会、企画制作Avex Entertainment、後援渋谷区。

展示作品は、杉本博司、森山大道、荒木経惟、篠山紀信、舞山秀一、レスリーキー、蜷川実花、皆川聡など、著名写真家の作品が数多く展示されていた。


大御所はさておき、目に止まった作家は次の3名。

谷尻誠の本業は建築家。SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd.の代表。展示されていた一連の作品は自然の雪景が完全に統一されたブルートーンで表現されている。感情、情緒ではなく、洗練された冷徹な思想とテクニックで表現された作品に、一貫性のある哲学に基づいたスタイルを追求する建築家の美意識をみることができる。IMAの企画「わたしの一枚」ライアン・マッギンレーの「Plotter Kill Storm」について「“こう撮る方法”を考え抜いたんだな、と思うと少し嫉妬します」と書いているが、展示作品には強いインスピレーションと影響を受けたことが伺える。


梅川良満はフォトグラファーとして国内外の雑誌や広告、音楽、ファッションなどの分野のクライアントワークを行いながら、自身の制作活動も行っているようだ。Gasbook.netのインタビューには「16から18歳くらいまでの間はさ、DJになりたかったり、デザイナーになりたかったりしたんだけどね、色々やってきてさ結局残ったのが写真だったんだよね。」とあるが、今回の企画展の作品は、いわゆる「写真」よりも自身のクリエーションを写真というツールでキャプチャしたアート表現ともいえるポップで刺激的な作品群だった。ブツ撮りの広告写真家の表現と近いが、クライアントワークを意識せず、作品そのものに没頭しているところにハミ出した感性を感じる。因みに、写真を志すきっかけとなったのがIrina Ionescoというフランスの女流写真家との出会いだという。1935年生まれのモノクロームの官能的なポートレート作家である。


大橋英児は1955年 北海道生まれの写真家。1984年から2006年まで「人間にとっての幸福は何か」をテーマに、ネパール、パキスタン、チベット、中国西域の広大な自然と、そこに暮らす少数民族をとらえたドキュメンタリー作品を制作。2010年からフリーの商業写真家として活動するかたわら、ありふれた風景の一つでありながら日本ユニークである「自販機のある風景」シリーズの撮影をはじめる。今回の企画展での展示作品は、このシリーズから。日常の街角だけでなく、ほとんど人通りもないような山間部や最果ての岬から、東日本大震災後の瓦礫のなかに至るまで、日本各地に偏在する自販機のある風景に、静かに逞しく生きる名もなき日本人に対する思いが表現されているように感じることができる。ドキュメンタリーのようでもあるが、その奥に描き出されたものは美であるように思う。「自販機のある風景」で2018に第34回写真の町東川賞 特別作家賞を受賞している。


https://www.artphototokyo.com/


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